十勝三股 (とかちみつまた) と帯広をむすんだ。
士幌線 士幌(しほろ) 4
いまでは足寄国道という。
上士幌も士幌も、
それまではまちなかを国道241号がはしっていた。
士幌線の踏切をわたらねばならない。
交通量もふえる。
そこでまちなかと踏切をさけるべくバイパスができた。
バイパスは上士幌、士幌とも、
帯広側の踏切手前から右ななめに、
いっきに町をはしょっていく。
バイパスができたころ自転車ではしってみた。
いきかう車は少ない。
畑がひろがるばかり。
赤いトタン屋根の士幌駅がみえる。
みたことのない角度から士幌駅をみた。
こだかいところに駅はある。
遠く東ヌプカウシヌプリをのぞむ。
新鮮であった。
いまおもう。
それは絶景である。
士幌町農業協同組合所有の倉庫がたちならぶ。
引込線がしかれていたとはしらなかった。
あとはいつもの景色とかわらない。
防風林にかこまれた家が点在。
たてながの黒土畑。
なぁんだ、
落胆したのをおぼえている。
2025年04月30日
2025年04月28日
士幌線 士幌(しほろ) 3
十勝三股 (とかちみつまた) と帯広をむすんだ。
士幌線 士幌(しほろ) 3
士幌線は単線。
駅は上下線のホームがあった。
相対式2面2線というそうな。
駅舎のあるほうが下り上士幌方面行。
帯広へいくときは、
線路をわたりもうひとつの乗場にいかなくてはならなかった。
線路のうえから上士幌方面をのぞむ。
鉄路は上り下りともまっすぐのびている。
四角いディーゼル車がこちらにむかっている。
士幌駅のむこう側には製材所があった。
トロッコ用の線路が小屋と小屋のあいだに敷かれていた。
そこには大好きなポイント切替が装置されていた。
だれもいないときだ。
トロッコをゆっくりはしらせる。
ポイントのうえを車輪がすべる。
レールのすきまで車輪がゴトン。
またゴトン。
なんどもなんどもくりかえす。
わたくしはただうっとりと悦にいる。
線路の奥には製材所からでる木のぬか置場があった。
このぬかをわがやのストーブの燃料につかっていた。
士幌線 士幌(しほろ) 3
士幌線は単線。
駅は上下線のホームがあった。
相対式2面2線というそうな。
駅舎のあるほうが下り上士幌方面行。
帯広へいくときは、
線路をわたりもうひとつの乗場にいかなくてはならなかった。
線路のうえから上士幌方面をのぞむ。
鉄路は上り下りともまっすぐのびている。
四角いディーゼル車がこちらにむかっている。
士幌駅のむこう側には製材所があった。
トロッコ用の線路が小屋と小屋のあいだに敷かれていた。
そこには大好きなポイント切替が装置されていた。
だれもいないときだ。
トロッコをゆっくりはしらせる。
ポイントのうえを車輪がすべる。
レールのすきまで車輪がゴトン。
またゴトン。
なんどもなんどもくりかえす。
わたくしはただうっとりと悦にいる。
線路の奥には製材所からでる木のぬか置場があった。
このぬかをわがやのストーブの燃料につかっていた。
2025年04月26日
かたくな
かたくな
かりあげた髪はひとつきは経っていよう。
銀色の眼鏡をかけてとなりの車両からやってきた。
手荷物をふたつ連結扉のまえにおく。
決壊をふせぐための土嚢をおくように、
すきまを丁寧にふさぐ。
薄毛のトップコートはよれている。
タッタソルのシャツをきている。
奇妙な仕草。
座席にすわる初老のおとこが不機嫌になる。
まわりの客はうつむいている。
初老の男はうつむいた。
目にしなければ気分を害さない。
腕をくみ、
背をのばし、
目をつむる。
ききみみをたてる。
ひとりで問答をはじめる。
目をひらくべきか、
このまま無関心をよそおうべきか。
なにかあったときみていなかったというのは卑怯ではないか。
目をあけて一部始終監視するべきではないか。
初老の男は目をあけた。
駅につく。
客が降り、
乗ってくる。
杖をついた女性がいた。
初老の男はジェスチャーで座席をゆずろうとする。
杖の女性は大丈夫ですといった。
かりあげの男は本を3冊もっていた。
ていねいに床におく。
また手でかかえる。
かれの仕草から、
本の表紙をみてもらいたいのではないか、
初老の男はおもう。
駅に着く。
客は降り、
また乗ってきた。
かりあげの男は直立し、
かかえた本の表紙を客の目にはいるようにしむける。
奇妙なふるまいに客はおどろきかれからのがれた。
かりあげの男のまわりにひとはいない。
それ読んだよ。
年寄の声だ。
かりあげの男はふりむく。
きびしい本だね。
かりあげの男がくずれるようにしゃがみこむ。
両の脚は床にはりつく。
堰がきれたようにうなだれる。
あたまがふるえる。
かりあげの男は嗚咽する。
あなたも読んだのかい。
年寄はいった。
きびしいなぁ。
かりあげの男は衆目にはばかることなくすすりないていた。
かたくなでいるということは、
ときにあぶないひとをいう。
かたくなでいるということは、
なにをしでかすかわからない。
かたくなでいるということは、
つねにひとりぽっちになることだ。
覚悟などいらぬ。
そもひとはひとりぽっちなのだから。
かりあげた髪はひとつきは経っていよう。
銀色の眼鏡をかけてとなりの車両からやってきた。
手荷物をふたつ連結扉のまえにおく。
決壊をふせぐための土嚢をおくように、
すきまを丁寧にふさぐ。
薄毛のトップコートはよれている。
タッタソルのシャツをきている。
奇妙な仕草。
座席にすわる初老のおとこが不機嫌になる。
まわりの客はうつむいている。
初老の男はうつむいた。
目にしなければ気分を害さない。
腕をくみ、
背をのばし、
目をつむる。
ききみみをたてる。
ひとりで問答をはじめる。
目をひらくべきか、
このまま無関心をよそおうべきか。
なにかあったときみていなかったというのは卑怯ではないか。
目をあけて一部始終監視するべきではないか。
初老の男は目をあけた。
駅につく。
客が降り、
乗ってくる。
杖をついた女性がいた。
初老の男はジェスチャーで座席をゆずろうとする。
杖の女性は大丈夫ですといった。
かりあげの男は本を3冊もっていた。
ていねいに床におく。
また手でかかえる。
かれの仕草から、
本の表紙をみてもらいたいのではないか、
初老の男はおもう。
駅に着く。
客は降り、
また乗ってきた。
かりあげの男は直立し、
かかえた本の表紙を客の目にはいるようにしむける。
奇妙なふるまいに客はおどろきかれからのがれた。
かりあげの男のまわりにひとはいない。
それ読んだよ。
年寄の声だ。
かりあげの男はふりむく。
きびしい本だね。
かりあげの男がくずれるようにしゃがみこむ。
両の脚は床にはりつく。
堰がきれたようにうなだれる。
あたまがふるえる。
かりあげの男は嗚咽する。
あなたも読んだのかい。
年寄はいった。
きびしいなぁ。
かりあげの男は衆目にはばかることなくすすりないていた。
かたくなでいるということは、
ときにあぶないひとをいう。
かたくなでいるということは、
なにをしでかすかわからない。
かたくなでいるということは、
つねにひとりぽっちになることだ。
覚悟などいらぬ。
そもひとはひとりぽっちなのだから。
ラベル:掌編
2025年04月24日
議会が機能していない
議会が機能していない。
わたくしはそう感じている。
物価の高騰に対処できず、
コメの品薄にメスをもいれられない。
議会においてあつかう課題は、
わたくしからみれば重箱のすみをつついているようにしかうつらない。
議会は停滞したまま。
メディアも同調するばかり。
東日本大震災前の状況もまさにそうであった。
当時、
政府は官僚いじめにはしり、
議会では卑小な「いった」「いわない」をくりかえす。
結果制度改革は宙吊りのままにおわった。
政権を奪取したときのかっこよさは、
微塵もなかった。
逡巡するだけの既存政治家。
だからこそドナルドトランプさんのような、
政治を商売のようにあつかうビジネスマンが顔をもたげる。
やるか、
やらないか。
たしかに判断は早い。
決断もすみやかである。
良いか悪いか。
わたくしにはわからない。
いずれにせよ政治とは判断である。
ちかいうちニッポンも似た状況になるではあるまいか。
若くて有能でも、
いばりちらす政治家だけは御免蒙りたい。
ただ、
この邦には、
女性たちという、
ねむったままの潜在力がある。
覚醒せねばなるまい。
わたくしはそう感じている。
物価の高騰に対処できず、
コメの品薄にメスをもいれられない。
議会においてあつかう課題は、
わたくしからみれば重箱のすみをつついているようにしかうつらない。
議会は停滞したまま。
メディアも同調するばかり。
東日本大震災前の状況もまさにそうであった。
当時、
政府は官僚いじめにはしり、
議会では卑小な「いった」「いわない」をくりかえす。
結果制度改革は宙吊りのままにおわった。
政権を奪取したときのかっこよさは、
微塵もなかった。
逡巡するだけの既存政治家。
だからこそドナルドトランプさんのような、
政治を商売のようにあつかうビジネスマンが顔をもたげる。
やるか、
やらないか。
たしかに判断は早い。
決断もすみやかである。
良いか悪いか。
わたくしにはわからない。
いずれにせよ政治とは判断である。
ちかいうちニッポンも似た状況になるではあるまいか。
若くて有能でも、
いばりちらす政治家だけは御免蒙りたい。
ただ、
この邦には、
女性たちという、
ねむったままの潜在力がある。
覚醒せねばなるまい。
2025年04月16日
士幌線 北平和(きたへいわ)
十勝三股 (とかちみつまた) と帯広をむすんだ。
士幌線 北平和(きたへいわ)
59611。
19671。
ともに蒸気機関車である。
十勝を最後に活躍した。
士幌線で蒸気機関車の客車牽引列車にはおめにかかったことがない。
貨車の牽引ばかりである。
蒸気機関車が客車を牽引する列車に乗ったのは、
根室本線で、
池田からの帰り、
帯広までではなかったか。
こげた茶色の客車である。
根室本線と並行する通信線電柱をそれまでみたことがなかった。
鉄橋にも通信線電柱がつらなり、
さすが根室本線だけはある、
と納得したおぼえがある。
蒸気機関車からのすすが目にはいったのもこのときである。
ディーゼル車しか乗ったことがなかったので、
発車のさい、
連結器の音がガチャンガチャンとつづけてきこえた。
すこしおどろいた。
突発音がにがてで汽笛を発する蒸気機関車にはちかよりがたかった。
耳に指で栓をする。
汽笛のたびに指をあてる。
が、
かならずひと呼吸おくれる。
士幌駅で貨車のいれかえをみていた。
駅のはしに引込線があり、
貨車を出し入れする。
発車のたびに汽笛を発した。
ひきこみ線の横は倉庫で、
ちびっ子たち禁断(遊んではいけない場所)の遊び場になる。
汽車通学する子たちがいた。
それまでは汽車通学している子がいることすらしらなかった。
みな北平和でおりる。
農家さんちのちびっこたちである。
スクールバスの範囲におさまらない地域の子たちであったのだろう。
みな顔見知りであった。
そのころ、
3つ年下の顔見知りが列車に轢かれた。
線路でよこになっていたという。
くたびれてよこになっていたのかな。
線路からつたわる、
カタンコトンの音がここちよかったのかな。
いまでもおもいおこす。
士幌のつぎは北平和。
乗降場である。
無人駅でもある。
士幌線 北平和(きたへいわ)
59611。
19671。
ともに蒸気機関車である。
十勝を最後に活躍した。
士幌線で蒸気機関車の客車牽引列車にはおめにかかったことがない。
貨車の牽引ばかりである。
蒸気機関車が客車を牽引する列車に乗ったのは、
根室本線で、
池田からの帰り、
帯広までではなかったか。
こげた茶色の客車である。
根室本線と並行する通信線電柱をそれまでみたことがなかった。
鉄橋にも通信線電柱がつらなり、
さすが根室本線だけはある、
と納得したおぼえがある。
蒸気機関車からのすすが目にはいったのもこのときである。
ディーゼル車しか乗ったことがなかったので、
発車のさい、
連結器の音がガチャンガチャンとつづけてきこえた。
すこしおどろいた。
突発音がにがてで汽笛を発する蒸気機関車にはちかよりがたかった。
耳に指で栓をする。
汽笛のたびに指をあてる。
が、
かならずひと呼吸おくれる。
士幌駅で貨車のいれかえをみていた。
駅のはしに引込線があり、
貨車を出し入れする。
発車のたびに汽笛を発した。
ひきこみ線の横は倉庫で、
ちびっ子たち禁断(遊んではいけない場所)の遊び場になる。
汽車通学する子たちがいた。
それまでは汽車通学している子がいることすらしらなかった。
みな北平和でおりる。
農家さんちのちびっこたちである。
スクールバスの範囲におさまらない地域の子たちであったのだろう。
みな顔見知りであった。
そのころ、
3つ年下の顔見知りが列車に轢かれた。
線路でよこになっていたという。
くたびれてよこになっていたのかな。
線路からつたわる、
カタンコトンの音がここちよかったのかな。
いまでもおもいおこす。
士幌のつぎは北平和。
乗降場である。
無人駅でもある。
2025年04月13日
士幌線 士幌(しほろ) 2
十勝三股 (とかちみつまた) と帯広をむすんだ。
士幌線 士幌(しほろ) 2
その旅館は七面鳥料理で有名であった。
七面鳥は独特な鳴きかたをする。
声をあげると七面鳥は鳴いた。
たまごもにわとりよりひとまわり大きい。
いまでこそ、
クリスマスに珍重されるが、
そのころは、
折詰にはいっている唐揚げをたべるのがせいぜいであった。
ある日、
裏の飼育場に野良犬がはいって七面鳥を襲う。
被害はあきらかではない。
ただ、
おどろいたのは、
襲ったであろう野良犬が、
通りの電柱につるされていた。
そこには、
この犬の飼いぬしでてこい。
札がつるされていた。
一代でその旅館を、
七面鳥料理できずいた先代。
いきものの屠りかたに、
手練れをおもわせた。
なによりも、
おとなのきびしさをかいまみた。
士幌線 士幌(しほろ) 2
その旅館は七面鳥料理で有名であった。
七面鳥は独特な鳴きかたをする。
声をあげると七面鳥は鳴いた。
たまごもにわとりよりひとまわり大きい。
いまでこそ、
クリスマスに珍重されるが、
そのころは、
折詰にはいっている唐揚げをたべるのがせいぜいであった。
ある日、
裏の飼育場に野良犬がはいって七面鳥を襲う。
被害はあきらかではない。
ただ、
おどろいたのは、
襲ったであろう野良犬が、
通りの電柱につるされていた。
そこには、
この犬の飼いぬしでてこい。
札がつるされていた。
一代でその旅館を、
七面鳥料理できずいた先代。
いきものの屠りかたに、
手練れをおもわせた。
なによりも、
おとなのきびしさをかいまみた。
2025年04月12日
真実はいつも少数派
天気予報はできているのだろうか。
気象予報士がふえて気象予報の精度はあがったのだろうか。
気象予報士を管轄する官庁の仕事がふえただけなのではないのか、
とは以前書いた。
気象予報を生業とする会社はふえて、
いったい気象庁の役割はどうしたのだろう。
気象庁はいうだろう。
天気だけではない。
地震や災害をあつかっている、と。
地震は予知できない。
ならば、
地球の現象である気象もまた予知できない。
そういうべきなのではあるまいか。
いや、
10分後ならほぼ○○パーセント、
24時間前なら○○パーセント、
予測できているという。
が、
予測を百分率でかたるそもそものまちがいにきづいていない。
地震予知とおなじで、
できないといったはずなのに、
わけのわからない確率をもちだす。
それはできないといった地震予知ではないのか。
気象は予知できるはず、
地震はいわばディジタルで、
気象はアナログだから分析しやすい。
あたらないのは地球のせいなのだ、
とでもおもいこんでいるのではないのか。
こんなにデータがあつまっている(たかだか100年)のに、
予測をまちがえる。
あたりまえだ。
データが不完全なこと。
データのとりかたにまちがいがある。
きづいていない要素がある。
固定観念にしばられたまま。
にもかかわらず。
コンピュータの解析力をあげたとて、
インプットする数式にあやまりがあればこたえとてちがう。
数字であればなおさらのこと。
真実はいつも少数派という。
その少数派すら産みだせていない。
それが現状なのではあるまいか。
つかわれるのはただ、
ただ、
税金である。
気象予報士がふえて気象予報の精度はあがったのだろうか。
気象予報士を管轄する官庁の仕事がふえただけなのではないのか、
とは以前書いた。
気象予報を生業とする会社はふえて、
いったい気象庁の役割はどうしたのだろう。
気象庁はいうだろう。
天気だけではない。
地震や災害をあつかっている、と。
地震は予知できない。
ならば、
地球の現象である気象もまた予知できない。
そういうべきなのではあるまいか。
いや、
10分後ならほぼ○○パーセント、
24時間前なら○○パーセント、
予測できているという。
が、
予測を百分率でかたるそもそものまちがいにきづいていない。
地震予知とおなじで、
できないといったはずなのに、
わけのわからない確率をもちだす。
それはできないといった地震予知ではないのか。
気象は予知できるはず、
地震はいわばディジタルで、
気象はアナログだから分析しやすい。
あたらないのは地球のせいなのだ、
とでもおもいこんでいるのではないのか。
こんなにデータがあつまっている(たかだか100年)のに、
予測をまちがえる。
あたりまえだ。
データが不完全なこと。
データのとりかたにまちがいがある。
きづいていない要素がある。
固定観念にしばられたまま。
にもかかわらず。
コンピュータの解析力をあげたとて、
インプットする数式にあやまりがあればこたえとてちがう。
数字であればなおさらのこと。
真実はいつも少数派という。
その少数派すら産みだせていない。
それが現状なのではあるまいか。
つかわれるのはただ、
ただ、
税金である。
士幌線 士幌(しほろ)
十勝三股 (とかちみつまた) と帯広をむすんだ。
士幌線 士幌(しほろ)
父親は地方官吏であった。
わかいころは野球部のキャッチーであった。
いちど地区大会に優勝したことを、
うれしそうにはなしてくれた。
写真もみせてくれた。
児童のころ、
八方美人的(自分では認識できていない)なこどもにとって、
父親のともだちのすくなさがきになっていた。
発端は、
母親が、
となりの後輩が、
自宅で麻雀を部下同僚と楽しんでいるのを、
聞くか目にする。
うらやましく感じたのだろう、
家でもつれてきたら、
と進言した。
すると父親は、
ともだちというものは、
たやすくできるものではない。
といった。
息子は、
圧倒的に父親をしのぐ年賀状の枚数をほこり、
ともだちづくりなぞ簡単だとのたまう。
部下をもてなしたい母親は落胆していた。
息子は年をかさねた。
父親の生きた年月をこえるころ。
ともだちのすくなさをなげくことはしなくなる。
ともだちは数ではない。
いなくてもかなしむことはない。
ひとり、
たったひとりで充分をしるのであった。
士幌線 士幌(しほろ)
父親は地方官吏であった。
わかいころは野球部のキャッチーであった。
いちど地区大会に優勝したことを、
うれしそうにはなしてくれた。
写真もみせてくれた。
児童のころ、
八方美人的(自分では認識できていない)なこどもにとって、
父親のともだちのすくなさがきになっていた。
発端は、
母親が、
となりの後輩が、
自宅で麻雀を部下同僚と楽しんでいるのを、
聞くか目にする。
うらやましく感じたのだろう、
家でもつれてきたら、
と進言した。
すると父親は、
ともだちというものは、
たやすくできるものではない。
といった。
息子は、
圧倒的に父親をしのぐ年賀状の枚数をほこり、
ともだちづくりなぞ簡単だとのたまう。
部下をもてなしたい母親は落胆していた。
息子は年をかさねた。
父親の生きた年月をこえるころ。
ともだちのすくなさをなげくことはしなくなる。
ともだちは数ではない。
いなくてもかなしむことはない。
ひとり、
たったひとりで充分をしるのであった。
ラベル:ともだち
2025年04月10日
士幌線 上士幌(かみしほろ) 6
十勝三股 (とかちみつまた) と帯広をむすんだ。
士幌線 上士幌(かみしほろ) 6
上士幌町は森林資源が豊富である。
上士幌駅のホーム、
むこうがわにはいつも丸太ん棒がところせましと置かれていた。
上士幌駅は北海道拓殖鉄道の終点であったそうで、
ゆったりとした構内はそのなごりなのであろうか。
鹿追町を経由して起点新得駅までの私鉄である。
士幌町の西北部に拓殖鉄道中音更駅があったそうである。
たずねたことはないけれど、
そのあたり、
畑をななめに、
こんもりとしたところがつづく。
それが拓殖鉄道跡なのだろう。
拓殖鉄道跡といえば、
音更川の橋梁跡で、
ちかくに丘があった。
小学生の遠足ではじめておとずれた。
わたくしには、
まさに秘境であった。
士幌線 上士幌(かみしほろ) 6
上士幌町は森林資源が豊富である。
上士幌駅のホーム、
むこうがわにはいつも丸太ん棒がところせましと置かれていた。
上士幌駅は北海道拓殖鉄道の終点であったそうで、
ゆったりとした構内はそのなごりなのであろうか。
鹿追町を経由して起点新得駅までの私鉄である。
士幌町の西北部に拓殖鉄道中音更駅があったそうである。
たずねたことはないけれど、
そのあたり、
畑をななめに、
こんもりとしたところがつづく。
それが拓殖鉄道跡なのだろう。
拓殖鉄道跡といえば、
音更川の橋梁跡で、
ちかくに丘があった。
小学生の遠足ではじめておとずれた。
わたくしには、
まさに秘境であった。
2025年04月08日
士幌線 上士幌(かみしほろ) 5
十勝三股 (とかちみつまた) と帯広をむすんだ。
士幌線 上士幌(かみしほろ) 5
上士幌は母親の郷里である。
わたくしは、
とにかくちょろまつであった。
兄貴はおっとりしていたらしい。
胃腸に難をかかえていたようである。
ちゃかちゃかする弟ではあるが、
いつも、
コロンとしたうんちで、
あつかいやすかった、
と母親は述懐した。
おむつをパラパラしただけでうんちをはらえたという。
そうくりかえされると、
ちびっこにとってもほめられたようでうれしかった。
母親は化粧品のセールスレディになるわけであるが、
十勝のいち町村で、
できる仕事はかぎられる。
おさないこどもから、
めをはなすわけにもいかない。
苦慮のすえの選択であったのだろう。
いざ仕事となるも、
こどもをつれて接客する。
こどもはすぐあきる。
かえりたいとぐずる息子には、
手をやいたにちがいない。
そののち化粧品会社からいくたびと表彰をうけるまでになる。
母親ながら、
ご立派、
とたたえたい。
士幌線 上士幌(かみしほろ) 5
上士幌は母親の郷里である。
わたくしは、
とにかくちょろまつであった。
兄貴はおっとりしていたらしい。
胃腸に難をかかえていたようである。
ちゃかちゃかする弟ではあるが、
いつも、
コロンとしたうんちで、
あつかいやすかった、
と母親は述懐した。
おむつをパラパラしただけでうんちをはらえたという。
そうくりかえされると、
ちびっこにとってもほめられたようでうれしかった。
母親は化粧品のセールスレディになるわけであるが、
十勝のいち町村で、
できる仕事はかぎられる。
おさないこどもから、
めをはなすわけにもいかない。
苦慮のすえの選択であったのだろう。
いざ仕事となるも、
こどもをつれて接客する。
こどもはすぐあきる。
かえりたいとぐずる息子には、
手をやいたにちがいない。
そののち化粧品会社からいくたびと表彰をうけるまでになる。
母親ながら、
ご立派、
とたたえたい。
2025年04月06日
2025年04月02日
猫のこと
猫のこと
おさないころ猫をかっていた。
母猫をかっていても、
そのまま放置しておくと、
子猫たちは、
シャアシャアと警戒する。
それでも、
くびねっこをつかまえて、
うでにかかえると、
かわいい子猫にもどる。
家のまえの舗装道路は国道である。
いまほどの往来はないにせよ、
国道ゆえ大型車がとおる。
わたくしがその国道のむこうがわへ横断した。
そのとき、
ふりむくとあざやかな赤い液体がちっていた。
子猫が車にひかれた。
母親はつたえる。
わたくしのすがたを追ってついてきたという。
ちかよると、
歯がむきだしの遺体はむざんであった。
が、
鮮血。
きれいな赤であった。
なきがらは母親の手で。
いとしくて、
いとしくて、
かなしくて、
かなしくて、
詫びのきもちもいっしょくた。
家にかえってなきぬれた。
おさないころ猫をかっていた。
母猫をかっていても、
そのまま放置しておくと、
子猫たちは、
シャアシャアと警戒する。
それでも、
くびねっこをつかまえて、
うでにかかえると、
かわいい子猫にもどる。
家のまえの舗装道路は国道である。
いまほどの往来はないにせよ、
国道ゆえ大型車がとおる。
わたくしがその国道のむこうがわへ横断した。
そのとき、
ふりむくとあざやかな赤い液体がちっていた。
子猫が車にひかれた。
母親はつたえる。
わたくしのすがたを追ってついてきたという。
ちかよると、
歯がむきだしの遺体はむざんであった。
が、
鮮血。
きれいな赤であった。
なきがらは母親の手で。
いとしくて、
いとしくて、
かなしくて、
かなしくて、
詫びのきもちもいっしょくた。
家にかえってなきぬれた。
ラベル:子猫